行列の同値関係

行列解析における同値関係とその意義

行列解析では、2つの行列が「同じ構造を持っている」と判断できる条件として、さまざまな同値関係が用いられます。以下の表は、主要な同値関係の種類と定義式を示したものです。

前提として、以下の記号を使用します。

  • \(U\), \(V\):ユニタリ行列(共役転置が逆行列)
  • \(L\):下三角行列
  • \(R\):上三角行列
  • \(D_1\), \(D_2\):対角行列
  • \(S\), \(T\):任意の正則(非特異)な正方行列

なお、対等(equivalence)ユニタリ対等(unitary equivalence)三角同値(triangular equivalence)対角同値(diagonal equivalence)では、行列 \(A\), \(B\) は正方である必要はありません。

同値関係 \(\sim\) 定義式(\(A \sim B\))
合同(congruence) \(A = S B S^T\)
ユニタリ合同(unitary congruence) \(A = U B U^T\)
*-合同(*congruence) \(A = S B S^*\)
共相似(consimilarity) \(A = S B \bar{S}^{-1}\)
対等(equivalence) \(A = S B T\)
ユニタリ対等(unitary equivalence) \(A = U B V\)
対角同値(diagonal equivalence) \(A = D_1 B D_2\)
相似(similarity) \(A = S B S^{-1}\)
ユニタリ相似(unitary similarity) \(A = U B U^*\)
三角同値(triangular equivalence) \(A = L B R\)

標準形と不変量の考え方

行列解析では、同値関係に基づいて行列を分類するための標準形不変量の概念が重要です。

標準形とは、ある同値関係における代表的な形のことで、各行列はその同値類に対応する標準形を持ちます。

集合 \(S\) 上の同値関係 \(\sim\) に対し、標準形の集合 \(C\) が以下を満たすとき、標準形の系と言います。

  • \(S = \bigcup_{a \in C} S_a\)
  • \(a \ne b\) ならば \(S_a \cap S_b = \emptyset\)

同様に、不変量とは、同値な行列に共通する特徴を関数として取り出すものです。ある関数 \(f\) が不変量であるとは、

\[a \sim b \Rightarrow f(a) = f(b)\]

関数族 \(F\) が完全不変量系であるとは、逆も成り立つ、すなわち

\[a \sim b \Leftrightarrow \forall f \in F, f(a) = f(b)\]

となることを意味します。たとえば、特異値分解で得られる特異値は、ユニタリ対等に対する完全不変量系です。

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